音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~





食べたいけど…… 食べたらきっと、戻してしまいそう。


「ふぅー」


「まおちゃんッ」


「どうしたの?」


「はい」


ん?

なに、これ?


理央ちゃんが手に持っている“モノ”

それは……。


「ゼリー?」


「そっ、今日の給食の残り。 これだったら食べられるでしょ? だからあげる」


「ありがと……」


ゼリーとかなら柔らかくて食べられるかも。

本当は給食って持って帰ってきちゃイケナイのに…… まぁ、いっか。


冷蔵庫で夕ごはんまで冷やしてあったのか、冷たいゼリーを口に運ぶ。

冷たくておいし……。


妹の理央ちゃんに心配されるお姉ちゃんってどうよ?

たかだが“難聴”でこんな弱っていちゃダメッだ。

もっと強くならなきゃ。