音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

どうにかならないかな…… この性格。


「まーおっ」


いっくんが楽しそうにあたしを呼んだ。


「何?」


あたし、ちょっとだけまだ怒っているんだからね。


「アメやる」


「……… ありがとう」


いっくんに手を伸ばして手のひらに一つのアメがのった。
――― いちごミルク。


普段ならアメ一つで許さないけど……
あたしが好きだって本当に知っているんだ。


よくいっくんからこのアメを貰うけど…… いっくんがこれを舐めているのを見たこと無い。


いっくんは本当に昔からあたしを見てくれていたんだ……



「いっくん、ありがとう」


「ん、どーも」


「本当に、ありがとう……」


「どーしたんだよ、急に」


いっくんが、少し鼻で笑った。


ありがとう…… いつもあたしを遠くから見守ってくれて。
いつも、あたしを大切にしてくれて、ありがとう。