「だからさ、まお?」


「ん? なに……」


「そんな急ぐな。
急がなくたって俺は逃げてかねーし」


来年までは絶対に一緒に生活できる。


「まおはこれから俺を知っていけばいい。
どーせ、何も俺の事なんて知らないだろ? 知っているとしたら…… 生年月日と俺の家族だけだろ?」


いっくんはあたしより2週間誕生日が早くて、お父さんとお母さんの三人家族。


あと、あたしが知っているのは……



「意地悪だけど、すこーしだけ優しいよね」


「はぁ!? いつも優しくしてやってんだろ?」



いっくんが眉間に深いシワが寄った。


いつも優しくって…… 絶対にそれは無い!


いつも『バーカ』とか『遅い』って、言うもん。


あたしだってこれでも頑張っているんだからね。



「お前が頑張るって、ただマンガ読む事だけだろーが!」


「いーや!
それ以外にも頑張っているからっ!!」