「俺がいつも側にいて助けられるわけでもない。
社会へ出た時のまおへの風当たりは強いと思う。

そんな時、同じ場所に俺がいられるわけでもないだろ?

だから、そんな中で少しでも仕事とか出来るようになって欲しい」


それは、あたしの耳の事を心配してくれているの?


いっくんの言う通りだ。
今だって左右の聴力は差があって、聞き取りずらい時だってある。


それに、いつか本当に右耳の聴力が無くなってしまう時が来るかもしれない。


そうなった時…… あたしへ向けられる視線は、ヒドク…… 冷たい視線だろう。


いっくんはそうなった時の事まで考えているの?



「まだ卒業まで一年はある。 その間、色々経験とかしてもらいたいって思うんだ」


今は『学校』と言う、大きな囲い中での生活。


だけど…… 囲いが外れた時。


一体、あたしはどれだけの事に耐えられる?