『怖い』なんて気持ちは…… 無い。


ただ唇を合わせるだけ。


――― 好きだよ、いっくん。



目を閉じているからいっくんがどんな顔をしているかは、分からない。


でも…… いっくんが動くのは分かる。


「………」


ガタリと、イスが動いたのが分かった。


いっくんがあたしの方を向いたんだ。



ドキッ ドキッ ドキッ。


胸が大きく鳴る。
ずっと近くにいたいっくんとキス…… なんて信じられない。


「――― っっ」


あたしの頬にいっくんが触れた。
冷え症のあたしとは違う、温かい指。



ヒザに置いてある手を、強く握りしめた。


おいっ、まお!
何、緊張しているんだ。


今からキスするのはいっくんなんだぞ。


なんかいっくんなのに、緊張しちゃう。


――― あっ。 いっくんが動き始めた。
前が見えないけど、いっくんが近付いてくるのがわかる。


たぶん……
触れるまで、あと少し。