「そこで“あいつ”を最後に見たよ」


「――― う、うん」



今、いっくんは『特別教室』にいるってこと?
そこに行けば、いっくんに会えるって事?


会って直接聞きたい気もするけど…… どうしようかな?
今朝、いっくんに『バカッ』って言っちゃったんだよね。


それに今日は何度か目が合っても、反らしちゃったし。

――― 会いづらい。



「樹は簡単には怒らねーよ。
……… な、愛川」


「うん、そうだよ。
前田くんは簡単には怒るような性格じゃないよ。
前田くんを怒らすのはまおだけ」



ムムッ…… いっくんを怒らすのがあたしだけって。
その言い方、ちょっとひどくない?


いっくんのとこ、行ってみようかな……


ガタリとイスを動かした。



「ちょっと“用事”」


用事なんてウソ。
いっくんのとこに向かうけど…… なんだか三人に悟られたくてついつい、ウソついちゃった。


どーせ、3人ともあたしがどこに行くか分かっているけど…… 笑顔で見送ってくれた。


なんだか今は、いっくんのとこに行かないといけない気分なんだ。