音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

意味分かんない。


「気にすんなっ」


いっくんの手が頭に延びてきた。


「あっ! もー、最悪。
髪がグシャグシャじゃん」


「なってろっ」


せっかく朝とかしてきたのにっ!


グシャグシャになっちゃったよ。



「いっくんのバカーッ」


「まおに言われたくないっつーの」


バカバカバカッ。


手袋を外して髪を直した。


「なあー、まお?」


「なによっ」


キリッと右側に立ついっくんをにらみ上げた。


「そう怖い顔するなよ」


怖いだってしたくなるし。
こっちは髪をグシャグシャにされたんだよ?


「好きな菓子ってあるか?」


「……… はっ? お菓子」


お菓子って何?
好きなお菓子くらいいくつかあるけど…… 何するの。


「母さんがまおに“好きなお菓子”を聞けって言われたか聞いているだけ。

ほら、来月は“バレンタインデー”だろ?」