「それに、あたし言われたの」


「何を?」


「“退院してからはなるべくまおと一緒に行ってあげて”…… ってね」


「………」



いっくんが菜々にそんな事を言ったの?
あたしには、何も言わなかったじゃん。


そりゃ…… 退院した後は一人で不安だったから菜々がいて嬉しかった。
退院してから、行きの電車は菜々とほとんど一緒だったのは。
――― いっくんが手を回してくれていたから?



「あたし以外にもまおの事を頼んだりしているんじゃない?」


いっくんはあたしが知らない間に色々やっていたの?


あたしが、困らないように。
一人で頑張れるように。


遠くで見守ってくれていたの?



「前田くん、本当にまおが大切…… なのかもね」


「………」


知らなかった事が、また一つ増えた。


いっくんの事を知れば知る程。


――― ドキッ ドキッ ドキッ。


胸が騒ぎ出す。