理央ちゃんの部屋から出て、冷えた体を温めるように湯船に浸かっていても…… さっきのいっくんの。


表情…… 姿……


あの…… あたしを捕まえた時に見せた、強い眼差し。


全部を鮮明に思い出せるんだ。



――― ドキッ ドキッ ドキッ。


心臓も、ゆっくり…… 静かに騒ぎ始めてくる。


こんな気持ち。
――― 初めて……


どう自分でコントロールしていいのか、分からない。


あたしの髪を優しく触るいっくんの手。
ケータイを使う、長い指。
何気に大きくて、ゴツゴツとしたカタイ背中。


いっくんの事を考えれば考えるほど。


――― ドキッ ドキッ ドキッ。


大きく心臓が騒ぎ出す。



「あ~~~~。 もー、ダメだ、ダメだ!」


バッシャッと、お風呂の中に潜った。


いつまでウジウジ考えているの?
別にいっくんに『好き』って言われた訳じゃないじゃん。


だったら、これからも。
今まで通りで大丈夫、だよ……