もし、いっくんがただのクラスメイトだったら……


話しかけるのだって無理!


背が高くて、足が早くて……
何でもできる前田 樹くんはあたしには高嶺の花。


幼なじみだから、無条件で話しかけられて、隣を歩けるんだ。



クラスメイトの前田 樹くんなら。


すれ違うだけでドキドキ。
手が軽く触れたら、ビクッと大きく揺れる。


ニケツなんて…… 絶ッ対、ムリ!


あたしがいっくんと同じ場所に立つだなんて…… 絶対に無い。




――― 好き。


いっくんから、そんな言葉はもらっていない。


あの時、いっくんに『――― 好き』


そう言われていたら、あたしはどうしていた?


ウルサイ位に心臓が騒いでいたあの時。



「――― いっくん」


いっくんの名前を呼んだって、無意味な事は分かっている。


それでも、困ったことがあると。
自然にいっくんに助けを求めようとするあたしは。


――― いっくんが好き、だから?