音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

「まおちゃん…… 最悪だよ」


「えっ、理央ちゃん!」


髪を濡らしたままの理央ちゃんはあたしに『最悪』と吐き捨てるて、階段を掛け上がってしまった。


なんで? どうしてなの。


あるわけないじゃん。
あるはずがない……



「理央ちゃん!」


「離して!」


「イヤだ」


自分の部屋に戻った理央ちゃんを捕まえた。


「まおちゃん、最悪だよ。 最低だよ」


辞めて、それ以上言わないで。


「樹くんの“キモチ”考えてない」


「考えた!」


「考えてない」


考えたよ、考えたに決まっているじゃん。


……… いっくんだよ。


いつも側に居てくれて。
助けてくれたり。


『バカまお』ってからかういっくんだよ。


そのいっくんが……



「樹くんの好きな子って“まおちゃん”なんだよっ!」