もう、下がれない。


「まお……」


近い、いっくんが近い。
ちょっと見上げれば、目の前にはいっくんがいる。


どうしてかな?
外はこんなにも暗いのに、いっくんの顔がはっきり分かる。



「――― んっ……」


「大丈夫、怖いような事はしないから」


スーッとあたしの頬を指で撫でる。
あたしもいっくんも、長時間外に居たせいかな?


冷たくなって、ただ。
いっくんが触れている事しか分からない。


指を上下に動かすだけで、いっくんは何も話してくれない……



「こうやって、まおに触れたかった……」


「いっくん?」


「まおを抱き締めたかったし、手も繋ぎたかった……」


どうしたの、急に……
いつものいっくんらしくない。


「まおに近づきたかった」


……… いっくん。


熱い目をした、いっくんに、あたしは捕まった……