音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

ダメだ。 あたしは相当、理央ちゃんを怒らせたみたい。


「理央ちゃん、いってらっしゃい」


「………」


休み明け、月曜日の朝。
玄関を出て行こうとする理央ちゃんに声を掛けたけど。


――― シカト……


今日だけじゃない。
この土日だって、挨拶すらしてくれなかった。


あたしは相当大きい爆弾を踏んでしまったみたい……



「珍しいな、まおと理央がケンカなんて」


「ちょっと、理央ちゃんを怒らせたみたい」


本当、パパの言う通り。
普段から仲が良くてお揃いの物とか持ち歩くくらいのあたしたちがケンカするなんて、珍しこと。


たまに……
『誰がお菓子食べたのッ!』って言うことはあるけど。
こうも、シカトしたり目を合わさない位のケンカは珍しい。


最後にこんなにケンカしたのっていつ?


「パパも、時間でしょ?
いってらっしゃい」


「行ってきます。

早めに仲直りしろよ」