音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

「昨日、誰かとぶつからなかったか?」


昨日?
よく、ボーッとしながら歩いているけど…… ぶつかったかな?



………… あっ!


「思い出したか?」


あたしはいっくんと思いっきり目を合わせた。


「………」


でも、いっくんから視線をずらした。


どうしてその事を…… 知っているの?
だって…… いっくんとは、昨日の放課後に会ってない。


あたしは優ちゃんと委員会だったのに。


会う機会なんて…… 無かったはずだよ。



「世の中スゲーいい時代だよな」


そうだね、いい時代だよね。


だから、その携帯がどんな理由があるの?


それっていっくんの携帯じゃん。


いっくんの手の中で揺れている。


その携帯に何かあるの?



「俺に隠せるとでも思ってんの?」


「……… 隠してないし」


なんだかこの光景…… 前にもあったな。
この後は、あたしいっくんに怒鳴られるのかな?


それでも…… 知られたくないんだもん。