音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

あっ、今日も汗臭い。


もうすぐ7月だもんね。



いっくんは何も言わない。


もしかしたらあたしの今の気持ちに気付いている?

……… なわけ無いか。


いっくんだもんね。


あたし、ママやパパにだって言っていないんだもん。
いっくんにバレるはずが無い。



「まお、着いた。
ちょい、降りろ」


「んー、どこ?」


自転車が停まった。


ピョンっと降りて、目の前にある…… 緑やオレンジのストライプのコンビニ。


いっくんの用事ってここなの?
コンビニ位一人で行けるような気もするけど……



「ボケッとすんな!」


置いていかないでよ!


もう、自転車にカギまで掛けてある。



「まおは“ソーダアイス”がいいよな」


「えー、ソーダよりこっちのイチゴがいい」


いっくんが指したのは『62円のソーダアイス』
あたしが指したのは『120円のイチゴアイス』