音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

みんながあたしを『障害者』って思っているかもしれない。


そうやって、疑う心がどんどん増していく。


本当はみんなを信じたい。


信じたいけど……


――― 疑ってしまう。


陰で悪口とか言っているのかな?
あたしが邪魔だとか思っているのかな?


みんな、そんな事は絶対に言わないと思いたい。


陽太くんや優ちゃん、リカちゃんが大好きだから……


ずっと友達でいたいから。


3人を信じたい。



「まお、どうかしたか?」


「なんでもなーい」


自転車は田んぼの中を走っている。


回りには誰一人としていない。
静かな時間がゆっくり流れる。


いつか『邪魔』って言われたらどうしよう。


とてつもなく大きな不安がドカッと襲いかかってくる。



「いっくん……」


小さくボソッと呟いて、いっくんのお腹に巻き付けている腕により強く力を込めた。


――― いっくんだけは離れないで。