音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

もー、最悪。


あたしと陽太くんは前後の席だからあたしが後ろを向いて話していた。
…… だから気付かなかったんだ。


「で、まお。
誰が“使えるか分からない”んだ」


「……… なんの事だろうねー」


どうして陽太くんは教えてくれなかったの!
陽太くんからはいっくんが見えたはずだよ。

ちょっと!! どうして笑おうとしているのを我慢しているの。
笑うなら、あたしを助けてよ。


陽太くんの意地悪。



「とぼけるなっ、このアホが。
もう、勉強教えないからな」


それは非常に困る。 困るよ!


今回のテストが赤点無さそうなのはいっくんのほんの少しの優しさのお陰なのに。


実は次も教わろうと考えていたり。


「いっくんはとってもスゴイ!
スゴイよ、パーフェクト!
エクセレントだよ」


褒める要素のある言葉を端から並べてみた。


いっくんが使えないだなんて、思っていないから。
いっくんはスゴイ人。


「……… ったく、そんなに必至になるくらいなら最初からくだらない事を言っていないでさっさっと帰れよ。

今日は耳鼻科だろ?」