耳は左右どちらかしか無いから、右か左だけど。


「右…… 違うか?」


「――― っっ……」


どうして、いとも簡単に当ててしまうのだろ。


あたしはいっくんから目を反らすように視線を外した。



「その様子じゃ、当たりだな」


「………」


そうだよ、当たりだよ。
当たったからってどうするの?
いっくんの右耳をあたしにくれるの?


そんな事、できっこ無いんだから……
あまり耳の話題には触れないで。


今はただ、『難聴』って事を忘れて普通の女子高生を楽しみたい。



「ま、俺はどっちでもいいけど。
早く食えよ、冷めるだろ?」


「うん、そうだね」


もう耳の話しは終わったみたい。
耳の次はさっき見た映画の話し。


この場の空気がさっきまでは冷たい位だったのに、一気に暖かくなったように感じるのは気のせい?