音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

――― コツンっっ。


「――― いったーい」


何するのよ!
人がせっかく『ミルクプリン』を写真を見ているっていうのにっ。


おでこを手で擦りながら向かいに座るいっくんに視線を向けた。



「いっくん!」


「見るページが違うだろうがっ!
デザートじゃなくてメインを選べ、メインを」


あっ、そうだ。
ここにはご飯を食べに来たんだ。
ミルクプリンじゃないよ。


デザートのページをちょっと閉じて、メインのページへ……


何食べようかな。
正直…… ミルクプリンしか見ていなかったからメイン料理は何でもいい。


ミルクプリンが食べられればそれでいい。



「まお、決まったか?
“メイン”料理は」


『メイン』って…… そう強調しなくたっていいじゃん。


それじゃあ、まるであたしがデザートしか決めていないような言い方じゃん。


間違っていないけどさ。