音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

エンディングが流れて画面が真っ暗。


あーあ、終わっちゃった。


んー、2時間も座っていたから肩凝った。



「そろそろ出るか?」


「うん、出る」


回りのお客さんもぞろぞろ出ていっている。


出るのは最後でもいいんだけど…… 時間かかるか。


ここは一番大きいシアターだもんね。



「まーおー、いつまで座ってんだ。
外に出ないのか」


「あー、出る出る」


ふーっと大きく息を吐き出した。


「いっくん、行こっ」


出る時もいっくんの裾をギュッと握る。


なんだかこうしていないと本当にはぐれちゃいそう。



「まお、ヘッドホン貸せ」


「えっ、いいよ。
これくらい自分で持てるよ」


右手はいっくんの裾を握って、左手にはヘッドホン。


これくらい大丈夫なんだか。


あたしっていっくんにそんなに『弱い』ってイメージがついているのかな?


それはそれで…… なんだか、複雑。