音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

右側、左側……
両方、丁寧にやってくれるいっくんのアゴ辺りしか見る事が出来ない。


髪の毛を触られるのって好きじゃないけど、今のように優しく触ってくれる人ならいいかも。



「……… いっくん」


「ん、そろそろいいかな…… はい」


「――― んっ」


スポッと頭からヘッドホンをを被せられた。


フワフワしたスポンジみたいのがが耳に当たる。


「ここで音量とか調節出来るから、自分でやりな」


右手を持ち上げて、右側のヘッドホンの下の当たりにあたしの指を添えてくれた。


指に当たる、ちょっとギザギザした感触……
これを回せばいいのかな?


クルクル回すと……


「スゴーイ!!」


あっ、いっくんの顔が緩んだ。


ヘッドホンからは何も聞こえていなかったのに、今はここと同じ曲が流れている。


コードとか何もさしていないのに、ここと同じ曲が流れるなんて…… スゴいよ!