音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

今はいっくんに彼女がいないけど…… いっくんも世の中からしたら一人の男だ。


彼女の一人くらい出来たっておかしくない。


あたしたちも無事に進級して2年に上がったんだから、可愛い後輩が入ってきた。
そんな子から告白されて付き合うかもしれないしね。


その人の為にも、今あたしがいっくんの手を握ってはいけないように思うんだ。



「彼女の為ねー。

何でもいいけど。
まお、服じゃなくて手を握れよ。
服握られているの変な感じるし」


さっき言ったじゃん。
その手は未来の彼女のモノ。


あたしは握らない。


「服“で”いい」


「あっそう」


あたしがいっくんの彼女になればいいんだろうけど……


それは、絶対に無い。


あたしがいっくんを好きになる事はない。


――― 絶対に無い。


いっくんだけは、好きになら無い。


好きになってはいけない存在なんだ……