音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

休んだ方がいいのはわかるよ。
分かっている……


あたしは首を振る。


「まおー」


だって……
耳が聞こえなくなって初めて友達と遊びに来たんだよ。


いつだって遊べる……
そう考える事だって出来るかもしれない、けど。


それではダメなんだ。


帰りたくないって伝えるように、ずっと握っている裾を強く握りしめた。



「ったく、少し様子見て決めるからな。
もし俺が判断して“無理”って思ったら速攻帰る。
いいな?」


粘り勝ちだ!
少し休めば絶対よくなる。
なんだかそう言う予感がするんだよね。



「ここじゃあ、あれだから映画館の中行くぞ」


いつまでも、ゲーセンの前に立っている訳にはいかない。


あたしが袖を握っているのを確認すると、あたしに背を向けてゆっくり歩き出した。


なんだか…… いっくんの背中が逞しく見える。