音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

『メッセージカードの発案は前田くん』

『バスを止めておく』


あたし何一つ知らなかったんだね。


もしかして、あたしたちが知らないような所でもっと色々やっていてくれたのかな?


だったら…… ゴメンね。


怒鳴ったお詫びにとか…… そういう気持ちでやらせちゃったのかな?


そんな事、考えなくていいのに。



「ねえ……」


「なんだ」


「色々ありがとう。
色んな子から聞いたよ。
あたしの事考えてくれていたんだってね」


「愛川と友川だな」


どうしてバレたの?
名前は伏せてあったのに。
超能力者みたい。


「色々っつー程はやってねぇよ」


「でも、ありがとう」



ありがとうの気持ちを込めて強くいっくんに抱き着いた。


顔が見えない今、なんだか全部の気持ちが言えちゃう。


普段は意地悪ばっかり言うけど、こっそり見えない所で動いてくれるいっくんって……



「――― 大スキ……」