ガラガラガラッと開ければそこに広がる懐かしい景色。


それと、ざわめきが一瞬収まり一斉に向けられるあたしへの視線。


ちょっと、痛いんですけど……



「まおー、ドアの前で立ち止まらないで。
後ろが入れないんですけど」


「あ、ごめん」



何こんなことで動揺しているんだ。
最初から分かりきっていたことじゃん。


ゆっくり自分の席に着く間も向けられる視線。


本当に痛いから。



「あの子が木下?」

「ずっと休んでいた子だろ?」

「入院していた子」


みなさん、ちょっと……


ヒソヒソ話しているんだろうけど、完璧聞こえていますから。



「耳が聞こえなくなったってやつか」

「それって“障害者”」


『障害者』
そんな言葉だって聞こえてきたっておかしくないよね。


だって、耳が聞こえないのは事実だもん。


本当は障害者でも、何でもないのに。