音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

はぁー。
いっくんにバカにされていたら着いてしまった。


教室の前に……



もう、ここまで来たんだ。


自分の教室に来て何が悪い。


どーんと、入ってやる。


でも、あたしの机上に他の人の荷物が置いてあったらどうしよう。


居ない存在って思われているんだよね……


それは、イヤだな。



ん……
右手に何やら温かい感触が。


あたしの右側に立つ人をちょっと見上げる。


「まお、あたしがいるから大丈夫だよ」


「優ちゃん……」


「まおのこと…… “大好き”だからね」


真っ直ぐ正面を向いてあたしと目も合わさないけど、優ちゃんの優しさしっかり伝わったよ。



「ありがとう、優ちゃん」


ギュッと一度だけ、強く握り返してその手を放した。


大丈夫だ。
頑張れ、自分。


目の前にある白いドアを開けた。