音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

――― 楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。



ドキドキ、ドキドキ……


胸が大きく跳ねる。


背筋にひんやりした汗を感じつつ、一段一段……ゆっくり階段を登っている。



「あー、やっべぇ。
化学の予習やってねぇー」


「樹は毎日だろ?」


「それも、そうか。
なんとかなるか」


3人が、ほんのちょっと羨ましい。


あたしが休んでいた間、毎日学校通って、勉強して、遊んだりしていたんだ。


どうせこの間の体育祭で色々な人と話したんだろうな。


あんなに、楽しみにしていた学校なのに……
教室に向かっているのに……


――― 逃げ出したい。


誰もあたしと仲良くしてくれる子はいないはず。


グループとか出来てあたしの入る隙間なんてないよ。


少しずつ教室に近付く度に、胃がキリキリ痛む。


やっぱり今日はもう帰ろうかな……