ゆっくり耳から離して、電話を切った。


いっくんと電話で話すのって初めてだ。


フって鼻で笑う感じとか電話だと全然違う。
隣で鼻で笑われるとムカつくけど、電話だと……


なんだろう、ちょっとカッコいい。

スーツを着た年上の人みたいな感じかした。


まさかいっくんをカッコいいって思う日が来るとは思わなかった。

木下 まお……
一生の不覚だー。



――― コンコンッ。


看護師さんかな?
そろそろ消灯時間になるし。


「はーい」


「木下さん、電気消してもいいですか?」


「お願いします」


今夜眠れるかな?
耳にいっくんの声が残って眠れないかも……

『お休み』って言った時のいっくん。
なんだか、ものすごく優しい声していたな。

いっくんの彼女になった人は毎日聞けるのか……
ちょっと、羨ましい。


「何かいいことあったんですか?
顔が嬉しそうですよ」


「そんな事、無いですって」


嬉しそうって……
いつもと変わらないよ。


ただ今日、クラスのメッセージカードは嬉しかったけど。


「勉強もしていないみたいだけど……
さっきまで何やっていたのかな?」