音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

「どうしたって、何が?」


『はぁー、お前なぁ。
用事があって掛けてきたんじゃ無いのか?』


なんだかいつもと違ういっくんの声に聞き入ってしまった。


男の子と電話って初めてだから何話していいか分からないよ。



「用事って言う程じゃ無いんだけど……」


『まあ、いいよ。
何があったか聞いてやるから話してみろ』


「えーっと……あのね」


どうした、まお!
いつもの威勢ははどこに行った?


しっかりするんだ。
相手はいっくんだ。


何も緊張する必要なんて無いんだ。


自分で自分を励まして……



「あのね、メッセージカード見たよ」


『あー、届いたか。
あれみんなで書いたやつだから』


「うん、ありがと。

……… って言うかいっくんのあれは何なの!
全く励ましでも無いんだけど」


言えたー。
言いたかったのはこれだけなのに随分手こずった。