音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

ビックリさせないでよ。


いっくんに送信し終えた途端暴れるんだもん。


そもそもこんな時間にあたしに用事って誰なの?



「―――っ!!」


忘れていた。
あたし、メール送る前にいっくんに電話掛けたんだ。


まさか掛け直してくるとは思わなかったよ。


恐る恐る通話ボタンをピッと押した。



「も、もしもし?」


『あっ、まおか』


「うん、まおだよ」


『どうした、急に電話なんか掛けてきて』


いつもはすぐ隣で聞こえるちょと低い声なのに、携帯を通してだと……


『――― お、まおー』


「な、何?」


『“何?”じゃねぇよ。
ったく、電話なんてしてきてどうしたんだって聞いたの?』


「そうだ、そうだ……」


より一層いっくんの声が低く聞こえる。
なんか、甘い声って言うの?


なんだかあり得ない位、心臓が動いている。


手に汗までかいてきた。


『で、どうしたんだ?』