音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

「急げって。
こっちは電車の時間があるんだよっ」


「えっ、はい……」



急かされて……
枕元に置いてある携帯を手渡してしまった。


って……
あたし、何やっているんだよ。

これじゃあ、個人情報をばらまき過ぎだよ。



「あっ、これやる。
今日来るときに貰った」


どこから出てきたのか分からないけど、チラシ見たいのを渡してきた。


いっくんにしたらゴミなんだろうけど……あたしにしてもゴミなんだけど。


まあ、せっかく貰ったものだし。
目でも通しておくかな。



『映画公開情報!』


大きく書かれている見出し。


映画か……
いいな、見たいな。


でも、耳聞こえないからなー。
行っても所々、聞こえない様な所があるかもしれない。


映画館へ行くくらいなら、DVD借りて一人で見た方がいいかも。



「何かよさそうのあったかー?」


「んー、特に無いかな……
でも、この推理映画みたいかも」


アニメの推理映画。
何年も見ていないから見たいな……


「ふーん」