音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

んもー、何なのよ!
人がこれから気持ちいい夢の世界に旅立とうとしているときに邪魔するのは!


なんだかムカつくからこのまま居留守でも使っちゃお。


返事をしなかったら部屋には入ってこないだろう。



――― その考えが間違っていた。


ガラガラと音を立て、ドアが開いた。


あたし返事しなかったじゃん。
この部屋には誰も居ないよ。


居留守使ったのバレバレだ。


体を少し起こし隣のベットと別けているカーテンを見つめた。



「なんだ、やっぱりいるし」


「はっ!?
いっくん……なんでいるの」


さっき、3人でエレベーターに乗ったよね?
あたし見送りにも行ったよ……


なのに、どうしているの。



「忘れ物したの?」


「そっ、忘れ物。

まお、携帯俺に貸せ」



はっ!?
意味が分からないんですけど。


どうして忘れ物をしたから携帯をいっくんに貸さなきゃいけないの。
おかしいよ、絶対。