音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

ずっと疑問に思っていた。


三人宛の手紙にも病院名は書かなかった。


ここにいるのを知っているのは家族と先生だけなのに。



「最初ね、先生に聞いたけど教えてくれなかったの」


優ちゃんがクッキーを食べながら、あたしに分かるように説明を始めた。



「まおが心配だったから、どこに入院しているか色々考えたんだけど……
病院って沢山あるから分からなくて」


そうなのだ。
学校の回りだけでも入院施設がある病院は5つを越える。


今いるあたしの病院も5つの中の内の1つ。



「それで、俺がまおが入院した日。
わざわざ学校帰りに寄って、病院と病室を教えて貰ったわけ」


『今は優ちゃんの説明を聞いているんだから横入りしないでッッ!』と言ってやりたかったが、頭が混乱し始めたぞ。


ちょっと、待って。
今のいっくんの言葉って……どう言う事?