音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

「優ちゃん、こっち開けて」


「了解」



あたしはもう一つの袋を開けようとした。


ビリッと切って開ければいいけど、30枚近くあるクッキーを4人で全部食べるのは無理。


だから、保存が出来るようにノリのついているところを取りたいけど……


パサッパサッと滑ってしまって、上手くいかない。


右手に針が刺さっているから手に力を入れづらい。
それに、指先しか使えないからより一層やりづらい。



「まお、貸して」


「ありがとう、優ちゃん……」


これ位、前は一人で出来たのに。
今は誰かに手伝って貰わないと出来ないだなんて……情けない。



優ちゃんに開けて貰ったクッキーを出して……


「いっただきまーす」


小さくて一口サイズのクッキー。
バターとチョコレート味の2種類。



「そういえばさー……
3人とも、どうしてここにあたしが居るって分かったの?」