――― バサッ。


「んもー、勝手に投げないでよ」


「ごちゃごちゃ言わずに着ていけ」


あたしがイスに掛けておいた少し厚手のカーディガンを投げるなんて……

もし床に落としたら汚れるじゃん。



「ほら、行くぞ」


「あっ、待ってよ」


渋々受け取ったカーディガンを肩から掛けて、病室の外に出ているいっくんを追いかけた。



でも、いっくん。
あたしがさっき言った事覚えている?


あたし、ドアくらい自分で開けられるからわざわざ持っていなくても平気だよ?




「ったく、着ろって言ったのにどうして肩に掛けているだけなんだよ。
ほんっとうに、言うことを聞かないんだな」


ムッキーーー!
言うことを聞かないんじゃなくて、わざと聞かなかったんです。



「カーディガンを着たら針に当たって痛いから袖を通さないんですぅーだっ」


あたしだってちゃんとした理由の一つはあるんだ。