ドカッと座ったいっくんは何も話してくれない。


本当にあたしを見張っているみたい。


ヒザを立てて、布団をギュッと強く握った。



――― 一体どれくらいの時間が経ったのかな?


時間にしたらほんの数分。


でも……
何時間も長い沈黙のように思えた。


視線はどんどん下がってしまい、さっきから自分の手しか見えない。
いっくんがどこを見ているかなんて、あたしには全く分からない。



「まお……
お前さ、俺に何か言うことあるんじゃねぇの?」


この時、やっと顔を上げいっくんを見る事が出来た。


「いっくん、に?」


あると言えば……沢山ある。
無い……とは言えないかな。


でも、沢山ありすぎて何から言っていいか分からないよ。



耳が聞こえない。
入院しちゃいました。


沢山ありすぎてわからない。



「えーっと……
…… アメでもいる?」


「はぁ!?
どうしてそうなるんだよっ。
もっと他にあるだろうが」


あるけどさ。
何から言っていいのか分からないんだからしょうがないじゃん。


「だったら、いっくんは何が聞きたいの?
あたしは話さなきゃいけない事が沢山あって何から話していいか分からないんだもん」