音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

「じゃーん、お菓子ボックス!」


「「「はぁー……」」」



手提げバックから取り出したあたしのお菓子ボックスを見て3人とも大きなため息をついた。


あたしは小児科に入院するわけじゃないから、今回の入院では『10時のおやつ』と『3時のおやつ』が出ないらしい……


学校にいれば当然、おやつなんて存在しない。


でもあたしは今、入院中。


おやつくらい食べたってバチは当たらないはず。



「見てみて。
“いちごみるく”に“ペコちゃん”に……」


マンガ本位の大きさのピンクの『お菓子ボックス』



「着替えとかは左側の棚に入れるから必要な時は自分で出して使ってね」


「はいはーい」



ママの声はスススーッと抜けていく。


あたしの意識は全てあたしの腕の中にある『お菓子ボックス』に向いている。



「理央ちゃん、アメあげる」