だってさ、トイレの……トイレの……


「フタが自動に上がる!」


スライドドアを開けたら開けたで、トイレのライトはパッと自動に点灯。


そして、ウィーンとフタが上がる……


どこかの豪華ホテルに泊まりに来た感じ。



「木下さん、点滴しますよー」


危ない、危ない。


危うくこの部屋にいる目的を忘れる所だった。


あたしはここに『難聴の治療』をやりに来たんだ。



「ベットに寝てくださいね」


「はーい」


真っ白なフカフカのベットに仰向けになって、あたしは両手を看護師さんに差し出した。


あたし的には右利きだから左手に点滴してもらえると嬉しいな。




ついに始まった。


1日1回、点滴して治療していく。


入院はだいたい1週間以上、2週間未満。


短いようで……
あたしの、長い……ながーい、治療が始まった。