「木下さん、お入り下さい」



――― ついにやって来た。


ツーンと……薬品の匂いが鼻を突く。


平日の午後と言うこともあって、子供たちが沢山いる。

でもそれは外の待合室。


診察室は、外の待合室の声なんてほとんど聞こえない。



「木下さん、こんにちわ」


「……こんにちわ」


ヤバッ。
先生を前にしたら手に汗かいてきた。


それに心臓だって、少しずつ早く打ち始めている。


ねえ、先生?
あたしの結果はどうなの?


「これ見てもらえる?」


小さな白い紙が2枚。


1枚はカルテに貼ってある紙、そしてもう1枚。


「これは今日の結果なんだけど……」


カルテに貼られている横に置かれた紙。


「初期の頃に戻っているんだよ」




それは一目瞭然。


左耳に近づいていたあたしの右耳の聴力が……
ほんの数日で、耳鼻科に初めて来た頃まで落ちてしまった。