「はい、これ。
いっくんの国語の小テストのプリント」



二人の楽しそうな中だったらいっくんもあたしに普通に接してくれる……とそんな淡い期待を抱きながら近づいた。



――― でも、そんな期待はすぐに消えていく。


「………っっ」


あたしが差し出したプリントを奪うようにして取り上げた。


「………樹?」


いっくんの変化に陽太くんがいち早く反応した。


あたしが乱入したから、陽太くんといっくんの和やかな空気が一気にピッキーンッッ!!と固まってしまった。


プリントを奪うように取ったいっくんは、やっぱり目も合わすようにしない。


今だって……
顔を窓際に向けて、目はどこを見ているのか全く分からない。


廊下側に立つ陽太くんやいっくんの正面に立っているあたしに目も向けてくれない。


あたしたち三人の間には春に似合わない、冷たく冷めきっている空気が流れる。




「まおー、配り終わった?」