音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

こうやって、優ちゃんとくだらない話をしていても……

心の中ではいっくんが気になってしょうがない。


教室の後ろ側から入って、廊下から2列目のいっくんの席に目を向けた。


「あ、前田くん来ている」


「そうみたいだね……」



良かった。
教室には来てくれた。


あたしと顔を合わせるのが嫌だからといって教室にいなかったら……と思ったけど、あたしの考えすぎだった。


イスに座って、何だか陽太くんと笑いながら話している。



いっくんはあたしと優ちゃんが教室に入ってきた事に気付いた?


陽太くんはあたしたちに気付いたのか、チラッと教室の後ろから入ったあたしたちに視線を移してくれたけど……


いっくんは見向きもしなかった。


いっくんの中ではあたしの存在は消されているんだ。