「はぁー、たくっ」


あたしの嘘を完璧に見抜き、呆れたようにため息を一つ吐いた。


「いい加減に下手な嘘をつくの辞めろよ。 何か俺に隠しているんだろ? 話したら楽になるかもしれないだろ?」


「隠してなんていないよ。 大丈夫だから、ね」


あたしの口から今は言えない。


“言ったら楽になる―――”

…… そんな事、ある訳ないじゃん。


“楽になる―――”って考えはいっくんの自己満足の話であって、あたしが楽になるわけでは無い。

話してしまったらきっと…… 逆に、辛くなる。

いっくんの優しさに触れる度、あたしは現実を受け入れないといけないことに辛くなるだけだ。


「まお…… マジでいい加減に言ったらどうだ? 俺だけじゃないんだぞ、陽太だってまおの様子がおかしいって気付いている」


今のいっくんの言葉ではっきりした。

なんだ…… クラスのほとんどかと思ったけど、いっくんと陽太くんだけなんだ。


だったら……。


「何も隠していないって。 ただたまーにボーッとしているだけだって陽太くんにも伝えて」


あたしは笑顔で嘘をつく―――。


まだこれでなんとかなるはず。

これでいっくんも諦めて帰るはずだ。


そう確信めいた気持ちで、いっくんに笑顔を振り撒く―――。