音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~





しかし、優しいいっくんだ。

再び、心配しているせいで優しくなる。


「マジで家で何かあったのか?

顔色だって春休みに会った時と変わらず悪いぞ」


「そんな事ないって」


いっくんのバイト先で買い物をした日以外にも、いっくんには春休み中に一度家に来て、会っている。

その時はまた軽く薬の副作用があってダルくてほとんどの時間をベットで寝て過ごしていたんだ……。


「まだ“風邪”が治っていないのか?」


あたしが“風邪”で具合が悪いと思っているいっくんには、こう言えば少しは納得してもらえるだろうか?


「う、うん! ちょっとまだ風邪っぽいんだよ。 だから学校でもボーッとしちゃうんだよ」


「本当にそれだけか? 家で何かあったから体調でも崩したんじゃないか? 春休みからずっと風邪を引いているだなんて、長すぎだろ?」



ヤッバーイ!!

いっくんが家でご飯を食べに来た日って確か…… 春休みの半分位過ぎた頃だったよね?

その頃から風邪を引いていた…… って考えても、長すぎる。

どう考えたっておかしいよ。


いっくんは……。