「今は俺の事を話しているんじゃないんだよ。
まおっ、お前の事だ。
最近ずっと変だぞ。
誰かが話しかけたってボーッとしているせいで気付いていないだろ?
…… 家で、何かあったのか?」
さっきまで怒気が含まれるような口調だったが、後半は本当に心配しているような口調になった。
ヤバい、いっくんに気付かれている。
聴力が下がってしまったせいでどうしても右側から話しかけられると聞こえない時がある。
そのせいで反応が遅れてしまうことがある。
でも、それ位なら……。
「ただ、ちょっとボーッとしていただけだよ」
こう言えば逃げられる。
深くは追求されないはず。
しかし、それはいっくんには通じなかった。
「嘘つくなっ!
俺にそんな嘘が通用するとでも思っているのかっ。
最近のお前は誰が見たっておかしいんだよ。
俺だけじゃない、陽太だっておかしいって気が付いているんだ」
ウソッ、陽太くんにまで?
それに“誰が見たって”って…… あたしの異変は誰もが気付いていることなの?
あたし、一生懸命隠しているのに……。



