長い校長先生の話なんか全く耳に入らず終わった始業式。

ただ校長先生の話を聞きに来たような半日を今、終えようとしている。


「まおー、帰るよ」


「はぁーい」


新しいクラスになっても帰りは優ちゃんと一緒。


優ちゃんが“友達―――”と思ってくれていると分かったけど……。

1年生の時のようにあたしに接してくれるか分からない。


「もう、遅い! 早く準備しなきゃ置いていくよっ!」


ヤバッ、それは非常に困る。

この春休み中はほとんど引きこもり生活を送っていたあたしには、急に一人で外を歩くのは…… ちょっと怖い。


「待ってよ、優ちゃん!」


口では急がす言い方だけど、廊下で必ず待っていてくれる優ちゃん。


そして、今日も―――。


「お待たせ」


「うん、帰ろう」


――― 優ちゃんが廊下で待っていてくれた。


あたしが“難聴―――”って言っても受け入れてくれてありがとう。

友達でいてくれてありがとう。


今年は沢山迷惑かけるとおもうけど――― よろしくね。


言葉にするのは恥ずかしいからそっと心で唱え、長い廊下を駆け出した。