ねぇ、優ちゃん。




ねぇ、優ちゃん。

もし…… もしもだけどさ、優ちゃんにあたしが“難聴―――”って言ったらどうする?


離れる?

聞きたくなかったかな?

どう、考える?


あたしにとって優ちゃんは大切な友達……。

わがままかも知れないけど、友達だからこそ、優ちゃんには分かって欲しいの。


「まお?」


優ちゃんが不思議そうな顔をしてあたしを顔を覗き込んできた。


「…… ん、何?」


「さっきから何難しい顔をしているの? 早く座ろ?」


難しい顔をしていたのは、優ちゃんに難聴と話すことを悩んでいたからだけど……。


「“座る”って?」


「そろそろ始業式が始まるよ? さっきから、担任の先生が“座れ”って言っているから…… ほらっ」


優ちゃんは前の方を指差す。


前の方から先生が“座りなさーい”と声を掛けてきているようだ。

声を聞き取れたわけじゃないけど、先生が手を上下させている様子から…… なんとなく、わかった。


「本当だ…… 気付かなかった」


優ちゃんは気付いたのにあたしは気付かなかった。


チラッと後ろを振り返ってみると…… 担任の声に、様子に気付いていない子がほとんどだけど。

気付き始めている子もいるんだ。