その日は

とても静かな

夕暮れでした。



茜色の空が少しずつ遠退き
薄暗い夜に包まれる



「優希…」



薄れゆく意識の中で
あなたを必死に呼びました。





あたしの部屋のシングルベットで共に眠る二人



もう二度とお互いを離さぬよう、
離れぬように繋いだ手の小指には目に見える赤い糸が繋がっていた





(…どうして?どうしてこんなになってしまったの?)



咲希の中に一つ生まれた
小さな疑問。

自分の運命という物語の主人公なのに、その物語がスタートしたことを気づかず運命の渦に巻き込まれて行く





(ただあたしは、優希に恋をしただけなのに…)





この世には
出来ることと出来ないことがたくさんある


選べることと選べないことがたくさんある


叶うことと叶わぬことがたくさんある


知る必要があることと知らない方が良かったことがたくさんある



僕らはそんな世界で生まれ、
出会い、そして恋をしました。


忘れもしない君と過ごした日々が
走馬灯のように脳裏を駆け巡る…。