「…北条さん。俺は、護りきれませんでした。すみませ…」
「いや、いい」
北条に遮られ、俺は目を丸くした。
北条は床を見つめ、小さく続ける。
「…一番の原因は、私にあった。君のせいだけじゃない」
何と答えていいかわからず、俺はただ北条をじっと見ていた。
「私はずっと…志乃の特別な能力にこだわりすぎていたんだ。父親失格だ」
「…そんなことないと思います」
北条は、驚いて顔を上げた。
「確かに、ちょっと間違ったかもしれません。…でも、あなたは今それを悔いてる。立派な父親ですよ」
北条は少し表情を和らげ、何かを決意したかのように、口を開いた。
「君は、確かに依頼を達成出来なかった。…代わりに、新たに依頼をしてもいいかな?」
「………え?」
「…大事な娘を、連れ戻してくれ」
俺は一瞬面を喰らいながらも、微笑んだ。
「あなたのお時間、承ります」