「驚きましたねぇ。あんな能力がこの世にあるなんて」
北条は、顔面蒼白なまま、中川の顔をじっと見つめていた。
「お嬢様がこう言うんですよ。"中川財閥の未来を1回だけ見る代わりに、私を狙うフリをして"ってね」
「…フリだと…?」
「父親が自分を護ろうとするのか、能力を護ろうとするのか知りたかったらしいですよ」
俺は、初めて会った日の志乃の言葉を思い出す。
"お父さんはね、私じゃなくて、この能力を護りたいんだよ。この能力が大事なの。…それが、すごく悔しい"
きっと、自分を見てもらいたかったんだ。
ずっと。
「もちろん、快く了承しましたよ。けど、俺が1回で満足すると思いますか?」
「…嘘ついたってわけか?」
俺の言葉に、中川は苦笑する。
「嘘?そんな可愛らしいものじゃない。交渉に策略はつきものなんですよ」
その顔を一発殴りたい。
その気持ちを、必死で抑える。
「…第一、お嬢様を捕まえてそのまま監禁でも出来ると思ってんのか?」


