中川は、ナイフを突きつけたまま北条を見る。
「…北条さんも、不思議だと思いませんか?あれだけお嬢様の能力を必死で隠してたのに、何故我々にバレたのか…」
北条が、顔を歪ませたのがわかった。
きっと、俺と同じ考えが頭をよぎったはずだ。
「お嬢様が教えてくれたんですよ。ご丁寧に」
月明かりが、その不気味な笑みを照らした。
予想が当たり、俺は唇を噛み締めた。
「…嘘を…言うな!」
静寂を突き破って声を張り上げたのは、北条だった。
「志乃が?何故自分の身を危険にさらす必要があるんだ!」
「何故?…可哀想なお嬢様。父親の愛情が欲しかっただけなのに」
「………何、だと?」
北条が見せた驚愕の表情を見て、中川はさらに声を押し殺して笑う。
「あのお嬢様はですね、俺のとこに一人で来たんですよ。俺と交渉をしにね」
少しずつだが、話が読めてきた俺は、黙ったまま中川の話に耳を傾ける。


